啓発情報誌 ス・テ・キ
特集/伝統工芸が彩る金沢冬の情緒
清々しく、潔く。金沢の冬の暮らしを彩る伝統工芸の数々。

 

 

 

 

 

 

 

金沢冬の情緒

金箔きらら
「金箔きらら」

小雪が舞う冬の情景が最も美しいとされる金沢。
この街には、長い冬を楽しむ文化・風習が息づいています。

 雪の季節、夜の金沢はさまざまな光に包まれます。武蔵ヶ辻では雪吊りのモニュメントに雪の結晶の形をした金箔をあしらいライトアップする「金箔きらら」が行き交う人の足を止めます。県下随一の繁華街香林坊でも、国道沿いの街路樹をイルミネーションが飾ります。
  年が明けて「寒の入り」。犀川敷では勇壮な「加賀鳶出初め式」が繰り広げられます。江戸時代の加賀鳶の伝統を継ぐ消防団の出初め式で、寒風の中での裸放水とハシゴ登りに大きな歓声がわきます。この頃、県立歴史博物館では「新春を祝う」と題した企画展が開かれ、申年の吉祥をテーマにした美術工芸品などが多数展示されます。
  古都金沢では、しきたりや習慣を尊重し、お正月の料理やおもてなしにも気を配ります。華やかな加賀友禅を纏い、加賀繍を施した包みを携えた女性が目をひくのもこの頃。お客様を迎える際には、料理や菓子、酒を厳選することはもちろん、器も金沢九谷や金沢漆器などの逸品を用意します。新春のお茶会や芸事の披露などの折りにも、心をこめたお祝いのやり取りをします。
  雪が降りしきり、寒さが最も厳しくなる「大寒」。加賀友禅で糊を洗い流す工程にあたる「友禅流し」は、寒中に行うのが特に良く、浅野川の清冽な流れの中で美しい友禅模様が泳ぐ様子が見られることもあります。
  立春の前夜は「節分」。この日、柊の枝に鰯の頭を刺したものを戸口に立て、豆をまき、新年の無病息災を祈る伝統があります。神社や一部の寺院などでは、豆まきをして立春を迎えます。
  食は金沢の冬の大きな楽しみのひとつ。二月には石川の食文化と風土を満喫する恒例イベント「フードピア金沢」が行われます。各界の多彩なゲストを囲んでの「食談」、芸妓のお座敷芸が楽しめる「兼六園雪見宴会」、家族やグループで気軽に楽しめる「フードピアランド」など、冬の金沢の食文化が存分に味わえる行事が満載です。
  釈尊入滅の忌日である二月十五日、真言宗、曹洞宗の寺院では「涅槃会」が行われ、涅槃像をかかげて供養を行った後、参拝者に涅槃団子が撒かれます。現代的な街の姿とは異なる、仏教の深いつながりを持った古の金沢の精神を知ることができます。
  やがて、やわらかな日差しに冷たい雪や氷も解け、春の気配が感じられる「雨水」を迎えます。雪国に訪れる春の足音に、人々は胸ときめかせます。

●金箔きらら……十一月中旬〜二月下旬
●香林坊地区ツリーファンタジー
  十一月上旬〜二月下旬
●石川県立歴史博物館「企画展 新春を祝う」
  一月四日〜二月一日
●加賀鳶出初め式……一月十一日
●フードピア金沢……二月十三日〜十五日
※大 寒……一月二十一日
  節 分……二月三日
  立 春……二月四日
  雨 水……二月十九日

花車
花車
雪
松
鶴
伝統工芸品における冬の意匠 梅
雪吊り
雪吊り
椿
椿
水仙
水仙

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