啓発情報誌 ス・テ・キ
Kisho-dentou
希少伝統工芸  加賀繍と加賀友禅の出会いが生む、 新たな工芸の世界。

「象牙二重巻琴(柾目)」
「象牙二重巻琴(柾目)」

琴

琴 Koto
芸どころ金沢に息づく音の文化

 藩政期から武家女性の教養のひとつとして重視された琴。金沢では現在も伝統的な技法で琴の製作が行われています。
  琴づくりは桐の原木を木割りして「荒甲」を仕上げることから始まります。荒甲は杢目(もくめ)が細かく整っているほど珍重されます。琴の音色を決めるのは、次のくり貫き工程。くり方で音色が変わるため、熟練の職人が経験と工夫をこらします。その後、表面をコテで焼き、象牙細工や蒔絵など装飾を施します。
  琴の魅力は、楽器としての音の美しさに加え、心を込めた手仕事が生み出す、フォルムの優雅さにあると言えるでしょう。

匠の技 野田 正明 氏●のだ まさあき
野田 正明金沢駅近く、別院通りにある「琴三弦 野田屋」の三代目。大学時代に調弦を学び、卒業後本格的な琴の製作に取り組む。店舗近くの工房で、甲のくり貫き、焼き、装飾、調弦までの工程を一貫して行う。「琴を演奏される人の感想や助言を反映させて、さらに良いものを作っていきたい」。
「雲海」
「雲海」
「四季の譜(うた)」
「四季の譜(うた)」
「雲海」
「雲海」
「木菟(みみずく)」、「カワセミ」
左:「木菟(みみずく)」
右:「カワセミ」

象嵌 Zougan
今を彩る、百万石の装飾美。

 天下泰平の江戸時代は、鎧や兜、刀などの武具も実用性より装飾性が重んじられた時代。加賀象嵌はこうした時代を背景に発達した彫金技術で、鉄・銅などの地金表面にたがねで模様を彫り、金・銀など異種類の金属の嵌め込んでいくものです。色彩の異なる金属を重ねた華麗な「鎧象嵌」に特色があり、象嵌部分が容易に脱落しない堅牢な平象嵌の技法として知られています。かつて武士の装いを彩った繊細な技は、今やアクセサリーやステーショナリー、インテリア小物を飾り、あるいは地金を壁材とした壁面装飾となり、現代の暮らしを彩っています。


匠の技 中川 衛 氏●なかがわ まもる
中川 衛金沢美術工芸大学卒業後、江戸時代の名品「金銀象嵌 水引の図鐙」に出会ったことから、二十九歳で加賀象嵌の高橋介州氏の門を叩く。平成十五年は日本伝統工芸展五十年記念展「わざの美」に出展した他、日本伝統工芸展日本工芸会保持者賞受賞、北国文化賞受賞など活躍。金沢美術工芸大学教授を務めて後進の育成にも尽力している。

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